2019年6月26日からリリース前まで公開されていたティザーサイトを記事化。「なぜ、辛メーターは生まれたのか?」ぜひご覧ください(*´辛`)♪
着想
辛メーターのアイデアはいかにして生まれ、どう成長し、これからどこを目指すのか。創始者である映画監督/映像ディレクターの江口カンに、彼が掲げた「この指」に「一番にとまった」ライターの元木哲三が聞く。
店ごとにバラバラな辛さの表記
「辛メーター」のアイデアを思いついたのは、いつ頃のことですか。
もともと辛いものが好きで、普段からカレーをよく食べたり、仕事で広島に行くと「汁なし担々麺」を食べたりしていたんです。3年くらい前かな、辛い料理を注文するときに、どの店も自分たちなりの表記をしていて、「これじゃあ、役に立たないな」と気づいたんです。
「2辛、3辛……」とか、「5倍、10倍、100倍……」とか、唐辛子や炎のイラストで表現していることもありますよね。
もともとそれほど辛さに強いわけではないんです。それで、初めて行った店だと、どれくらい辛いのかわからないので、「店でいちばん辛いのを頼んどくか」とか「ココイチだったら3辛を食べているから、同じ3辛にしておくか」といった感じで注文するんだけど、これがもう、期待はずれのことが多くて。
わかります。大げさなようですが、あれって「絶望」ですよね。
そう(笑)。辛いものが食べたいときに刺激が足りないと「ああ、1食損したな」っていう絶望感に苛まれるんです。かと言って、辛すぎると「こんなの食べられない!」となって、それはそれで困る。これ、店が独自の表現方法で表しているから、起こることだと思ったんですね。なんとかならないか、と。
「ココイチでいう【2辛】です」の衝撃
そんなときに、店員さんから「うちの料理は、ココイチでいうと……」と説明された。
そう、沖縄での撮影の合間にカレー屋さんに入ったときのことです。「この3辛というのは、どれくらい辛いんですか?」と店員さんに聞いたら「ココイチでいう【2辛】です」と答えられたんです。
なんと、ココイチを基準にした!(笑)。
率直な感想としては「辛さの表記に対してプライドはないのか」と思いました。オリジナルの基準があるのに、結局ココイチで表現しちゃったわけですから。でも、一方ではその例えがいちばんわかりやすかったのも事実なんです。「この店の【3辛】は自分にとっては物足りないだろうから、もうちょっと上のレベルを頼めばいいんだ」ってわかった。そのとき、辛さの単位を統一するという発想は有効で、世の中の役に立つと実感しました。
車の速度表示に例えてみると…
世の中の辛さの表記は見事にバラバラです。
車の速度に例えてみれば、この状況がよくわかると思うんです。もし、統一されていなかったら、どうなるでしょう。たとえばスピードメーターに表示される速度を、トヨタは自分たちの基準で【50トヨタ】とか、【90トヨタ】と呼んでいて、ホンダは独自の【50ホンダ】といった方法で表しているとします。それで「【50ホンダ】は、だいたい【90トヨタ】だよな」といったことを我々が忖度しなきゃならない世界だとしたら、不便極まりない。
確かに。不便を超えて危険ですよね。
だから辛さの世界では「交通事故」が起こりまくっているわけです(笑)。「物足りない!」とか「辛すぎる!」っていうね。
その大問題を解決するのが、辛メーターというアイデアだったわけですね。
バラバラになっている、辛さの基準を統一することができたら、それってまさに「ロマン」だと思うんですよね(笑)。
辛さの基準を集合知によって統一する「辛メーター」は、世の中に必要なサービスであることは確信していた。しかし、この概念がなかなか伝わらない。そんなとき……。
一人目の賛同者
飲み屋の席での雑談が……
バラバラな辛さの表記を集合知によって統一しようというアイデアが生まれた後、しかし、事はスムーズに進まなかったんですよね。
2年間は事実上、眠った状態でした。その間、世の中に辛い商品や辛いメニューが目に見えて増えていく。「これ、絶対に誰かがやるな」と焦りばかりが大きくなって……。
そんなときに、以前、ちょっとだけお仕事をご一緒させていただいたことがあるぼくに、カンさんが声をかけてくださって。
映画の構想があって、ただ、原作として小説が先にあるべきだと直観していたから、元木さんに「書いてみませんか」と持ちかけた。
その話もすごく嬉しかったんですが、ひとしきり話した後で、「全然、別の話なんだけど……」とカンさんが切り出した辛メーターのアイデアに、ぼくは衝撃を受けまして。
ぼくの印象だと、小説の話には全然、反応しないな、と。
いやいやいや(笑)、そんなことはない。でも、辛メーターのインパクトが大きすぎて、少しかすんでしまったというのは否めません。
辛メーターの何が響いたのか
それまでいろんな人に辛メーターの構想を話してきたんですが、その時点で元木さんの反応が世界一良かった。どこのポイントで一番ビビッときたんですか?
ああ、思い出しました。その時もカンさんから聞かれたんですよ。「自分が言い出したことなのにこんなこと尋ねるの変だけど、どこがいいと思ったのか」と(笑)。
なかなか人に伝わらないから、悩んでいたんですよ。
まず、「単位をつくろう」なんて話、それまで聞いたことがなかった。会社や団体といった大組織をつくる人はいるし、あるいは国家をつくる人もいる。でも、単位ですよ、単位。こんなすごいことを思いつくなんて、カンさんは天才だと思いました。
単位を民衆の手に!
これまで単位って、主に為政者がつくってきたんでしょうね。誰かが決めて、言わば押し付けるものだった。
そうですね。それが全体の利益につながるから、ではあるんでしょうが、権力者のものだった、と思います。それをぼくたち民衆の手でつくるなんて、これは革命じゃないか、と思って興奮したんです。大げさかもしれないけど、世界初の試みになる、と。辛メーターを使う人、全員がヘクトパスカルという単位におけるパスカルの存在になれる!
ある種のメディアアートとも言えますよね。ネットとスマホでみんなでつくっていくメディアであり、その活動自体がアート。
だのにほどよくバカバカしい(笑)。最高のプロジェクト、絶対に実現すべきだと思いました。それで、すぐに企画書を書いてみたんです。いま振り返ると、稚拙なものですが……。
うん、何をどこから始めたらいいのか。あの頃は見当もつかなかったから。
そういうわけで、構想から苦節3年で(笑)、ようやくプロジェクトとして動き出したんですね。
賛同者が現れ、プロジェクトとしての第一歩を踏み出した「辛メーター」。新たなメンバーとともに議論を重ねる中で、様々な「発見」「発明」が次々と起こってゆく。
作戦会議
マイ辛値という大発見
辛メーターを本気で実現しようと決めてから、いろんな分野のプロが集まってきて、議論が進み始めました。
仕事を終えて集まって、夜中まで議論して、終わってからみんなで辛いものを食べに行ったりして。
今でもですが、いつも熱く語り合っていますよね。その中で、いろんなアイデアが出てきました。
とくに「マイ辛値」は、ある種の発明だったと思う。ゼロの発見くらいの(笑)。
確かに。辛い物を食べて辛さを判定することを「辛ジャッジ」と呼んでいるんですが、「何度もジャッジしてもらえば、その人にぴったりの辛さの値を算出して提供できるんじゃないか」という話になって、「ああ、それはうれしい」と。
たとえば「あなたが好きな辛さは2.76KMです」といった感じでね。
「辛ジャッジ」とか「マイ辛値」とか、どんどん言葉が生まれていきました。ほとんどがダジャレですが(笑)。そう言えば、辛メーターの名付け親はカンさんですが……。
そう、それもダジャレで、尺度を意味する「パラメーター」からひらめいたんです。あと、「キロメーター」は「km」と表記されるから、「辛メーター」は「KM」で行こう、とか。
大笑いしながらも、ほんとに真剣に議論を続けました。
いい大人たちがね、本気でね(笑)
日本全国の辛料理に出会える!
まあ、しかし、みんなそれだけこのプロジェクトに魅力を感じていたんですよね。アプリでマップを開くと、自分がいるところの近辺の店舗情報と、辛い料理のリストが出てきて、その料理がどれくらいの辛さなのかがわかって、しかも、マイ辛値と比べることができるから、好みの辛さに確実に出会える。
夢のような話です(笑)。辛い物好きにはもちろんですが、興味はあるけど、それほど強くないという人に、むしろ役に立つアプリですよね。
自転車で家に帰る道すがらに、辛い麺を出している店があるんですよ。店構えが割と本気っぽくて、いつも横目で見ながら、「どれくらい辛いんだろう?」って思ってから、もう10年くらいになります。
10年!
いや、ほんとに怖くて、まだ行けてないからね(笑)。でも、辛メーターがあれば、行くべきかどうか、すぐに判断できる。「日本全国、どこに行っても、ぴったりの辛さの料理が簡単に探せるんだ。これはすごいぞ」なんて、みんなで話して盛り上がってましたね。
初めての試食会へ
ただ、なにを目標に進めたらいいのかがはっきりしなくて……。メンバーはみんな本業で忙しい人たちだし、「締め切りをつくらないといけない」と話しているときに、メンバーの池田さん(渉外担当)が「伊藤忠商事のアクセラレータープログラムに応募してはどうか」という提案をしてくれました。
大企業がスタートアップに対して、自社のリソースを提供して協業を目指す取り組みですよね。伊藤忠商事ならば食品を取り扱っているし、注目してくれるかもしれない、と。
そこから本格的な企画書づくりが加速しました。同時に「一度みんなで、実際に辛ジャッジしてみよう」ということになった。
ああ、あの試食会ですね、歴史的な(笑)
メンバーが一丸となって向かうべき目標を見いだした「辛メーター」。試食会で実際に辛ジャッジを経験することで見えてきた衝撃の事実とは?
衝撃の試食会
同じ3辛でもこんなに違う!
記録によると、最初の試食会は2018年9月27日に行われています。参加者はカンさん(KOO-KI)、元木(チカラ)、WEBの専門家であり戦略家、焼山ヤッキーさん(BRICK HOUSE)、マーケターであり、WEBディレクターであり、AIやアルゴリズムの知見を持つ深野さん、庶務の池田さん(江口オフィス)、コンテンツ制作の栗田氏、安永氏(ともにチカラ)の7名で、カレーを中心にカップ麺やスナック菓子、明太子など、なんと23品目をジャッジしました。
あの時は、基本的に「世の中の3辛を集めて比べてみよう」というコンセプトでしたね。どれくらい違うんだろう、と。
はい。このときは「0.0」が「まったく辛さを感じない」、「5.0」が「辛くて食べられない」ということだけを決めて、小数点第1位までジャッジすることにして、それぞれ紙に書いていきました。
それまで「10段階がいいんじゃないか」とか、「上限なしにすべきじゃないか」とかいろんな議論があったけど、この頃にはもう今のスタイルに近いところまで考えていたんですね。
そうですね。それで、数値が出揃ったところで単純に全員がジャッジした値の平均をとりました。結果を見ると「ココイチ」の3辛が「2.74KM」なのに対して、「ボンカレーゴールド」の中辛、これ、辛さを8段階にわけた中の3と表記されているものなんですが、なんと「0.18KM」と出た。
むしろ甘いくらいで、その日からボンカレーは我々の間で「スイーツ」と呼ばれるようになった(笑)。あの甘さは、逆に衝撃でした(笑)。
辛さが生み出すコミュニケーション🔥
辛さの表記が同じ「3」となっていても、驚くほど辛さに違いがあることがはっきりしました。
そう、それと、平均値だけでも、かなり納得できる数値が出たんです。もちろんアルゴリズムは研究していく必要があるけど、集合知で単位を作るというアイデアは行けるな、と実感できました。
あと、みんなでジャッジするのが、ものすごく楽しかったんですよね。なんというか、場が異様に盛り上がった。
この楽しさを、たくさんの人に体験してほしいと、心から思いましたね。
以前から「辛い料理をみんなで食べると楽しいな」とは感じていましたが、辛ジャッジが加わると、会話が爆発的に盛り上がる。辛さをジャッジすることを通じて、コミュニケーションを生み出したり、活性化したりすることが、辛メーターの役割のひとつだと実感できた会でもありました。
辛メーター、いざ東京へ
このとき、辛メーターの企画は伊藤忠商事のアクセラレータープログラムの第一次の書類審査をパスしていて、翌10月に本社でプレゼンテーションをするという流れでした。
与えられた時間は20分間。この短時間で、いかに辛メーターの考え方と可能性を表現して、理解してもらえるか。みんなで議論しながら、プレゼン資料を作っていきました。
アプリをつくることと、Webメディアを立ち上げようということは決まっていましたが、どちらもその時点では「モノ」がまったくなかったので、概念を理解してもらわなきゃならない。
いやあ、苦労しましたね。ギリギリまで資料の変更をしながら調整をして、なんとか前日に完成した。
プレゼンテーターはカンさんをメインに、ぼくとヤッキー、深野くんがサポートする形で、池田さんには試食の提供を中心に全体の進行を見てもらって、時間を測りながら5人で何度もリハーサルをして、よし、これで、東京の伊藤忠商事本社に乗り込むぞ、と。
緊張感とワクワク感がありましたね。
そして、いよいよプレゼン当日を迎えるわけですが……。
試食会で自信をつけた「辛メーター」。これまでの議論と実験結果を企画書に詰め込んで向かったドキドキのプレゼンは、果たしてどんな結果に!?
渾身のプレゼンテーション
3辛カレーの試食からスタート
青山の伊藤忠商事の本社は、これまで何度も目にしてきました。「でっかくてきれいなビルだな」と。ぼくはライターなので、「取材で訪れることはあるかも」と思っていましたが、まさか自分がここでプレゼンをすることになるなんて! わくわくしました。
しかもいわゆる「お偉方」の前でね。
辛メーターのメンバーがロビーに一人、また一人と集まってきて、「ああ、いよいよだな」と緊張感が高まりました。別室で最後のリハーサルをして会場へ。
試食会の経験から、プレゼンではまずみなさんに3種類のカレーを試食していただくことにしたんですよね。「表記と実際の辛さの乖離」は、体感してもらうのが一番だという確信があった。
ココイチの3辛、タイカレーの辛さ表記が3の商品、そして……。
スイーツですね(笑)。ボンカレーの中辛!
偉い方々が小さなプラスティクのスプーンで、紙コップに入ったカレーを召し上がってくださって(笑)。で、それぞれ5段階で辛ジャッジしてもらった後に、「これらはすべて3辛という表記なんです」と種明かしをすると、小さなざわめきがあって、「お、スタートはいい感じだぞ」と。
「君ら、アホなことを真面目に考えたな」
こんなにバラバラになっている基準を統一したいんですと、20分間、訴えました。
質疑応答の時間になって、投げかけられる質問に対して、まるで準備していたかのように、さっと資料が画面に映し出される。まあ、準備していたんですが(笑)。どの質問にもヤッキーや深野くんが、びしっと答えてくれるので、もう頼もしくて!
食料カンパニーのトップの方が「あなたたち、お酒を飲みながら、そうとう話したんだろう」とおっしゃった(笑)。
なんで「酒を飲みながら」という部分がバレたのか不思議でした(笑)。
そうそう。さらに「君ら、ようこんなアホなことを真面目に考えたな」みたいなニュアンスの言葉をかけてくださって、すごくうれしかった。
それで、その場で食料カンパニーの方々に「早く取りかかったほうがいいんじゃないか」と言ってくださいました。まだ、ぼくたちは室内にいるのに(笑)。
少なくとも「想いは伝わったな」という実感はありましたね。初めは難しい顔で聞いていらっしゃった方も、終わるとみなさん笑顔でしたし。
伊藤忠商事のメンバーとの一体感
ご挨拶をして、本社ビルを出た時、秋の西陽がみんなの姿を照らして、そこに心地よい風が吹いて、ぼくなんかもう、とにかくうれしかったんです。「いやいや、まだ、採択されたわけでもないのに」って、自分で自分にツッコミながらも、ものすごい達成感がありました。
たぶんね、あの時、ぼくたち地面から3センチくらい浮いてたと思う(笑)。
何がうれしかったかって「みんなで単位をつくる」という概念が受け入れられたことでした。
確かに。それと、この時は伊藤忠商事の食料カンパニーの方々やアクセラレータープログラムの担当の方とチームを組んでのプレゼンで、準備から本番まで、いろんな相談をしながら、たくさんのアイデアを出し合いました。今振り返っても、すごい一体感だったと思います。伊藤忠商事側のみなさんにも、この時点ですでに辛メーターに対する「熱い思い」があって、一丸となって面白いものを作ろうというムードが生まれたことも、成功の大きな要因だったと思います。
本当にそうですね。まさにひとつのチームになっている実感がありました。正直に言って、仕事を始めてから25年くらいですが、あの日が一番うれしかったかもしれません。
ええ! バンドでメジャーデビューした時より?
ああ、うーん、じゃあ、同じくらいって言っておきます(笑)。でも、その意味ではプレゼンを共にしたメンバーはバンドみたいな感じで、それぞれが自分の役割を担って、ある種のステージをやり遂げた、みたいな感覚でした。
その日は打ち上げと称して、浜松町の名店『秋田屋』を皮切りに何軒行ったんだっけ、たくさん飲みましたね(笑)。
はい。ベロベロになりました。
そして、この日からプロジェクトは実証実験に向かって、さらに加速していきます。新しい仲間も加わってね。
伊藤忠商事でのプレゼンで、熱き思いとロマンを語り尽くした辛メーターのメンバーたち。プレゼンの結果は? そして、その後の展開やいかに?!
感動の実証実験
仲間がひとり、またひとり
プレゼンから数日が経って、審査に通ったという連絡がありました。これで正式にPoC(実証実験)に進むことになって、これまでは試食会などアナログで辛ジャッジをしていましたが、いよいよしっかりと進めなければ、と。
この頃から仲間たちが増えていったんですよね。アプリの制作は安達寛誠くん(SEREAL)で、高い技術と知識を持っているだけでなく、辛いものにめっぽう強いところも辛メーターにぴったり(笑)。それから安部謙太郎くん(ONE SWARD)は、社会課題に取り組む事業支援に特化したクリエイティブマーケティングを手がけていて、「こういう才能は絶対必要だ」と思って声を掛けました。
辛さで事故が起こっていることは、まさに社会問題ですから(笑)。
そうそう。それから、映像製作で若い頃からともに仕事をしてきた森川幸治さん、梅野桂さん(いずれもpylon)に加わってもらったことで、やるべきことが整理されて、目標が見えやすくなりました。
ウェブではヤッキーのところに9232(くにみつ)くんが加わってくれて、さらにパワーアップしました。そして、やはり継続性のある事業としてしっかりと進めていくためには法人化しようということになって、財務について、国際税理士法人colorsの大久保圭太さんに相談したら、「大人たちがアホなことに真剣に取り組んでいる姿に感動した!」といって、仲間になってくれました。
それで、みんなで少しずつ出資をして、辛メーター株式会社を設立したのが、今年(2019年)の1月のことでした。辛メーターの使命は、何と言っても、辛さの世界統一単位をつくることです。そのためにアプリを作り、また、辛いものの情報を発信していくウェブメディアをつくろうとしていて、今はもっぱら、その制作にあたっています。早く世に出したい!
社食でまさかの4.20KM!
今年(2019年)の7月から8月にかけて実施された、伊藤忠商事の社員食堂での実証実験が終わりました。社員約100名の方に参加していただき、辛い料理10品目を食べてもらって、簡易版のアプリで辛ジャッジをしてもらいました。
実証実験前の試食会のときは、「若干、辛さが控えめだけど、やっぱり社員食堂なので、この程度が無難なのかな」と思って、社員食堂のシェフの石塚賢哉さんに、一部のメニューについて「もう少し辛さを上げてください」とだけお願いしました。ところが、実際に提供された料理はかなり辛くなってた!たぶん石塚さんは「よし、だったら辛くしてやろう」と張り切って、辛メーターをドーンと上げてくれたんでしょう(笑)。
試食会の時は、遠慮されていたんですかね(笑)。とくに「洋野菜たっぷりカレー」には悶絶しました。結果として、なんと「4.20KM」という、とんでもない値がついた。しかも、この数字にはぼくたちも納得でしたよね。
ちょっと言いにくいんだけど、ぼくには辛すぎてソースを少しだけ残してしまいました(笑)。
ぼくはなんとか完食しましたが、もう、その日の夕方から大変でして……。たぶん、日本の社員食堂で提供された最も辛いメニューだったと思われます。
その意味では記念すべき日であったし、もしかしたら、後々、「社員食堂辛革命」が起こった日として記憶されるかも(笑)。
アルゴリズムの開発が加速!
それにしても、参加してくださった方々が楽しんでくださっていたのがうれしかったですね。
そもそも商社で働く忙しい人たちだから、うまくスケジュールを合わせて10品目を食べることだけでも、一苦労だったはずなんです。でも、予想以上の方がコンプリートしてくれました。メニューは有料だし、アプリをダウンロードする一手間もあったわけで、本当に感謝しています。
そして、多くの方が投稿にコメントを書いてくださいましたよね。石塚さんがスペシャルな辛さを演出してくださった結果、「辛すぎて、全部、食べられなかった」という方もいらして、申し訳ない気持ちでいっぱいですが、そうした事故をなくすことが、辛メーターの役割ですので、「味わっていただいた『からさ』と『つらさ』は絶対に無駄にはいたしません」とお伝えしています。
コメントは本当にありがたかったですね。中には「一緒に食べた人と『このメニューは何KMだろうか』と語り合うのが楽しかった」「こうやって、みんなで単位をつくるのはおもしろい」といった辛メーターの本質をズバリ言い当てているコメントもあって、いやあ、これには本当に感動しました。
辛さについて語り合うという、新しいコミュニケーションを生み出すことは、辛メーターの大切な目的の一つだということは、カンさんが企画の当初から話してきたことでしたからね。
実際に辛いメニューを召し上がってくださっている方に、直接ヒアリングもして、生の声も伺ったんですが、みなさん、辛ジャッジを楽しんでくださっていることがうれしかったし、会話も弾みました。アルゴリズムなど仕組みの検証のためのPoCだったけど、結果的には僕らが想定した辛メーターのユニークさや楽しさが受け入れてもらえるという事実を検証することにもなりました。これは自信になりましたね。
現在は「集まったデータをどのように分析すると、より納得感の高いKM値が算出できるのか」について、九州大学の大草孝介先生にも教えを請いながら、アルゴリズムの開発を進めているところです。ここは辛メーターにとって極めて重要な部分です。
ああ、手前味噌になっちゃうけど、リリースが待ち遠しい!